色の付いた役どころ

【役のイメージ】


 先日、インターネットで動画を視聴していたところ、世界的に有名な映画『ハリー・ポッター』シリーズにおいて、主人公ハリーのライバルであり、いじめっ子役として知られるドラコ・マルフォイを演じた俳優、トム・フェルトンについての興味深い特集を目にしました。
 ドラコという役柄は、海外のファンの間で非常に嫌われる存在で、役を演じているトム本人に心ない言葉がファンレターで来たり、街中を歩いているだけで小さな子供たちが泣き出してしまうほど、強烈な悪役イメージが定着していたようです。
 実際のトム・フェルトン本人は、とても温厚で優しい性格の持ち主だそうなのですが、一度ついてしまった役のイメージというものは、なかなか拭い去ることができないものですね。
 日本の芸能界に目を向けてみると、いわゆる「悪役同盟」と呼ばれる俳優の方々がいらっしゃいます。彼らは悪役というイメージを逆手に取って、むしろそれを誇りにして、悪役専門の俳優として自分の立ち位置を確立されています。
 ふと気になるのですが、最近の悪役同盟のみなさんは、どのような活動をされているのでしょうか。
 最近はテレビドラマをあまり視聴する機会がないため、残念ながら詳しい状況がわからないのです。

【渥美清と寅さん】


 俳優と役柄の関係を語る上で、よく引き合いに出される有名なエピソードとして、昭和の国民的俳優である渥美清が、映画『男はつらいよ』シリーズの主人公・車寅次郎を完璧に演じ切るために、他の作品のオファーを全て断っていたという逸話があります。
 一般的に、俳優というのは演技の専門家として、様々な役柄に挑戦することで演技の幅を広げ、さらなる高みを目指すものだとわたしは考えています。多くの俳優が、できるだけ多様な役柄に挑戦したいと望むのは自然なことでしょう。
 しかしながら、渥美清は寅さんという役柄のイメージを決して崩さないように、不断の努力を重ねていました。
 これは単なる役者としての心構えを超えた、並外れたプロフェッショナル意識の表れと言えるでしょう。
 その結果として、渥美清は日本中どこへ行っても「寅さん」そのものとして認識され、さらには寅さん以前に出演していた作品までもが、後年、寅さんのイメージを通して見られるようになってしまったのです。
 確かに、俳優にとって生涯を代表するような当たり役に巡り会えることは、この上ない幸せかもしれません。しかし、私たち視聴者の立場からすると、つい、
「この俳優さんは、あの有名な役の前には、どんな人生を送っていたのだろう」
 というような想像を巡らせてしまうものです。
 例えば、渥美清が出演している作品を見れば、すぐに寅さんの姿を思い浮かべてしまい、「また渥美清はフラレるのだろうな」という先入観を持ってしまいます。
 同様に、悪役同盟として知られる俳優の方々が出演している場面では、どれほど善良な役柄を演じていたとしても、つい、
「まずい~♪ もう一杯」
 というフレーズで知られる、あの怪しげな雰囲気を想像してしまうのです。


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