【神よゆるしたまえー。宗教二世の実情を語ります。】
いまから三〇年前のことです。
わたしはぬか漬けに挑戦することになりました。クリスチャンの両親はぬか漬けには無関心で、主として柴漬けが食卓に並んでいました。一般に、漬物には無関心だったのですが、関心を持つようになったきっかけは、当時、同棲していた夫が、ぬか漬けに興味を持ち出したことから。「ぬか漬けは健康に良いし、手作りだともっと美味しいんだよ」と語ったその言葉に触発され、わたしも挑戦してみることにしたのです。
【ぬか漬けって難しい】
初めてのぬか漬け作りは、まるで未知の世界を探検するようなものでした。手探りで始めたぬか床作り。
買ってきたのは『いりぬか』。調味料が入っているから「入りぬか」なのかと思っていたら、調味料ナシの『炒りぬか』だった。
【なんてこったい】
生まれて初めて成功した野菜は、丸ごとのきゅうり。ジップロック(ジッパー付きのビニール袋)に入ったよく練ったぬか床が売られていたのです。それをぬか床にしました。翌日きゅうりを取りだしたときのきゅうりの柔らかさ、小口切りにしたときのあの感動は、いまだに忘れられません。
【ぬか漬けって奥が深い】
野菜を漬けるたびに、ぬか床の香りと触感が変わっていくのを楽しみ、やがてその魅力に取り憑かれるようになりました。
ぬかづけはわたしにとって単なる食の楽しみ以上のものとなりました。ぬか床をかき混ぜる時間は、忙しい日常の中でのひとときの安らぎであり、自己との対話の時間でもあります。ぬか漬けを通じて感じることの意味や価値を見つけていく。それはわたしにとって貴重な体験となりました。
【汝の隣人を愛せよ】
ただ、冷蔵庫が小さくなったのと、ぬか漬けの失敗が続いたため、最近ではたまにしかつけていません。
「汝の隣人を愛せよ」
わたしは、ジーッとぬかを眺めて呟きます。
目の前にあるのは、四本で千円台のチューブのぬか。チューブをにゅっと押すと、じゅわーっと調味料入りのぬかが、絵の具のように出てくるんです。
きゅうりやだいこんを小さく切って、ぬかをまぶしてラップでくるんで2日置くと、ちょうどいい具合に漬かってます。
ぬか漬けにも敵は存在します。カビや虫、そして時には失敗作。それらに直面するたびに、わたしは「汝の隣人を愛せよ」という言葉を思い出し、困難に対して忍耐と愛情を持って対処することを心掛けています。
困難に寄り添っていく。ぬかの言葉に耳を傾ける。クリスチャンだからって、ぬか漬けしちゃいけないわけがないのです。
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