ぼやくデイケア

【義母と無職】


 わたしは無職です。
 そこでふと考えを巡らせました。
 長年にわたって働き、定年を迎えて退職をなさった方々まで
一括りに【無職】という言葉で呼んでしまうことについて。
 戦後の混乱期から歯を食いしばって、
 国の復興と発展のために懸命に働き、
 今日の日本の繁栄に
 多大な貢献をしてこられた方々に対して、
 いささか失礼ではないだろうか。
 ところが、義母本人にとっては、
 それは特に気にかかることではないようです。

【毎日が楽しい義母】


 むしろ、【無職】という立場を
 心から愉しんでいる様子が伺えます。
 毎日、赤川次郎を読み、
 午後のひとときには『徹子の部屋』を
 楽しみに鑑賞している。
 確かに、現役で働き続けている
 高齢者も少なくありませんし、
 「人間として働くことは当然の義務である」
 という社会通念も根強く存在していますが、
 ある意味、義母にとってはそれらが
 まったく通用しない価値観なのでしょう。
 毎週水曜日には欠かさずデイケアに通う義母。
 そこで仕入れてきた雑誌の話題を、
 いつも生き生きと話してくれます。
「高齢になったら、好きなものを好きなだけ食べていいのよ!」
 この、デイケアで得た新たな人生哲学のおかげで、
 鶏肉と人参は絶対に口にしなくなりました。
 献立を考えるわたしとしては、
 かなり頭を悩ませる状況です( ´・_・`)

【義母の不満】


 総じてデイケアでの生活に満足している義母ですが、
 ただひとつ、どうしても納得がいかないことがあるようです。
 それは、送迎用の車両に取り付けられている
 チャイルドロックの存在です。
 認知症を患っている高齢者の方が走行中に
 予期せず外に飛びだそうとするのを防ぐためとして、
 内側からドアを開けられないように
 ロックが施されているのですね。
「私はまだボケていないのに、なぜこんな仕打ちを!」
 確かにその通りなのですが、
 送迎車両は利用者個別に
 選べるものではないのですから、仕方がないところです。

【デイケアでの義母】


 地域で開催されている百歳体操については、
 参加者の中で身体障害を持つ方が
 自分一人だけということで、そこへ参加するのは
 気が進まないと話す義母です。
 一方で、デイケアには様々な状態の
 高齢の方が大勢いらっしゃいます。
 比較的元気な彼女は、そんな環境の中で
 密かな優越感を抱いているように見受けられるのです。
 わたしに対して平等に扱ってくださる姑さんの
 意外な一面に、驚かされてしまいます。
 人間って、単純じゃないね。


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